第87章 穏やかな生活
杏「今日はたくさん泣かせてしまうな。家に戻るまで我慢してくれ。その代わり君が安心出来るようにずっと側に居よう。」
そう言うと自身の体が辛くなるのを承知の上で桜の布団に入り、その逞しい腕の中に桜を収めて胸に顔を埋めさせた。
すると桜は満たされ、同時に乾いた。
「…………………杏寿郎さん。」
杏「駄目だ。」
桜のねだるような甘い声に頭を痺れさせながらも杏寿郎は意志強く断る。
すると桜は『むぅ。』と不満気な声を出した。
杏「そんな声を出しても駄目だ。君はご両親が愛し合っている様を見た事も聞いた事もないだろう。互いに伝えるべきことではないんだ。」
「では声は出しません。……今夜はとっても怖い事があったんです。忘れさせてくれないのですか…?」
そう願われれば杏寿郎は言葉を詰まらせる。
その隙に桜は自身のパジャマのボタンを外してはだけさせ、胸元に杏寿郎の頭を抱き寄せた。
「杏寿郎さんは私に恥をかかせないのではないのですか。」
杏「また古い事を覚えているな…質が悪いぞ。」
「声は出さないので…。」
杏「駄目だと言っている。勇之さんが知ったら本当に死んでしまうぞ。手を握っただけでも卒倒してしまいそうであ、」
桜は既に杏寿郎が自身の口付けに弱い事を知っている。
そしてすぐに舌を入れると有無を言わさず柔らかい舌を杏寿郎のそれに絡めた。