第87章 穏やかな生活
杏寿郎は手を合わせると遺影を見つめてから目を閉じた。
杏(漸く会えたな。君がみのる君か。桜から話はよく聞いていた。とても愛していたと。もう聞いたと思うが今日、君の事を殺した鬼の様な男を…、)
長い間そうして語りかけていると後ろからふわっと優しく抱きつかれた。
杏「桜、まだ話しているんだぞ。そういった事は控えてくれ。」
「…………どういった事…ですか…?」
桜の声が思ったより遠かったことに驚いて目を開けるとその感覚は消えて『ありがとう、お兄ちゃん。』という声が頭に響く。
それは無一郎に似た声色であり、杏寿郎には誰の声なのかすぐに分かった。
杏(当然の事をしたまでだ。君だって出来ることをしようとしただろう。俺と違って子供だったというのに立派だった。)
そう伝えると戦友に似た幼い遺影を見つめてから立ち上がり、桜に先程の言葉を謝る。
訳を聞くと3人はとても驚き、自身も抱きついてもらおうと熱心に手を合わせたのだった。