第87章 穏やかな生活
天「身分証も偽装してたってことかよ。」
杏「顔写真はそのままに名前だけ変えたのだろう。学生を騙すには十分だと思ったのではないか。」
天「……あっそ。とにかく俺はスッキリできたからもう寝るわ。ねみぃ。」
杏「そうか。先程はわざわざ電話をしてきてくれてありがとう。宇髄は優しいな。」
杏寿郎がそう真っ直ぐに褒めると電話はブツッと切れてしまった。
杏「よもや。恥ずかしがりなのだな。」
そう呟きながら玄関のチャイムを鳴らすと急いで桜が出てくる。
「すぐ開けてもらって良かったのに。今さら他人行儀ですよ。」
杏「む、そうだったのか。」
そう言いながらも杏寿郎は丁寧に『お邪魔致します。』と少し抑え気味でありながら芯のある声を出した。
(でも…確かに私達まだ夫婦どころか婚約者でもないんだった……。)
勇之と由梨も杏寿郎を出迎えると一行はリビングへ向かったが、杏寿郎の申し出により杏寿郎は和室に移ったみのるの仏壇へと案内してもらい、線香をあげた。
そこにはまだ燃えきっていない線香が立っており、電話中に3人がもうみのるへの報告をしたのだという事が分かった。