第87章 穏やかな生活
桜は事件の後そのまま実家へ帰ることとなり、杏寿郎も由梨の勧めで一緒に泊まることになった。
桜は勇之が反対すると思ったが意外にも何も言わなかった。
勇「……桜、……何もされなかったのか。酷い事を…言われたんじゃ……、」
実家に向かう車の中、桜は勇之が思い切ったように口にした "酷い事" がみのるの事件についてだと察した。
そして、それを分かった上で安心させるような柔らかい声色を出すように注意しつつ口を開いた。
「うん。…言われたよ。でも杏寿郎さんがすぐにあの人を眠らせてくれたの。」
勇「………そうか。杏寿郎くん、ありが、」
杏「いえ!そもそもあの様な状況を作ってしまい申し訳ありませんでした!!」
そう言う杏寿郎は前の座席に居る勇之と由梨に向かって深々と頭を下げている。
杏寿郎が謝罪を口にしたのはこれが初めてではない。
勿論、開口一番にも謝罪したし、話しかけられる度に頭を下げている。
どんなに『謝る必要はない、守ってくれてありがとう』と言われても、今回の出来事は桜の言う "簡単に許してはならない事" だと判断したからだ。