第86章 7年前のやり直し
細「桜ちゃんは優しいな。これから死ぬ人間なんかの心配をするんだね。ここは人気が無いけれど彼は声が大きいし桜ちゃんも気が散っているようだし 目が覚める前に刺してしまおうか。」
その言葉に桜の全身の血が凍る。
そして7年前と違って縛られていない桜は慌てて震える足で立ち上がると机に突き立てたナイフを手に取って7年前と同じように振り被った男と杏寿郎の間に割って入った。
勢いを付けすぎて止められそうになかった細田が目を見開く。
(杏寿郎さん!杏寿郎さん!!杏寿郎さん…!!!)
その時、その心の声が聞こえたかの様に杏寿郎の目がパチリと開き 2人の間に眩しく熱い炎が走った。
―――ガンッ
細「な、んで…、」
呼吸の常中にまで至っていた杏寿郎は呼吸で薬の効き目を早く切らす事が出来たのだ。
そして机に縛り付けられたまま今は桜に向き合う形で立ち、細田は桜の代わりに机にナイフを突き立てている。
杏寿郎は呆ける桜に眩い太陽のような笑顔を向けていた。
杏「やったな!!桜!!!」
「……………………………え……?」
腕ごと胸元を縛られている杏寿郎は頭を撫でる代わりに桜の額にキスを落とす。
杏「やったな!!これで君は安心して過ごせるようになる!!!」
それを聞いて、その笑顔を見て、もう杏寿郎の後ろにいる男が絶対に敵わない恐れる存在ではないのだという事を実感した桜は膝から崩れ落ちて涙を流した。