第86章 7年前のやり直し
杏「すまないが…それはしない約束、なんだ…。何故かは分からないのだが、詮索はさせても………接触は嫌がっている……。」
細「そうか…それだと話が進まないな。」
天「いや、細田から得られる情報がどれだけあったのか知れた事自体も収穫だろ。…おい。」
杏「……ああ。」
杏寿郎は珍しく眠そうに目を擦った。
それを見て天元はげんなりとした顔をする。
天「お前、忠告してやったのにメッセージ読み続けてただろ。ここで眠るなよ。」
杏「むぅ。」
細「煉獄疲れてんだな…。俺飲んでないし車で来てるし潰れても俺が乗せてく。安心しろよ。」
天「だからそもそも疲れる理由がって話なんだよ。」
杏寿郎は眠そうに細田へ礼を述べると震えたスマホを手に取る。
杏(桜か。)
杏寿郎の目は今にも閉じそうになっている。
杏(アルバムの写真が1つ消えている……?桜に忘れられていた今世では見るのが辛くてきちんとチェックできていなかった。どれが失くなったのか分からないな…。だがとても丁寧に貼った筈だ。意図的に取らない限り……、)
そこで杏寿郎は全身の血の気が引くのを感じた。
杏(取った…?そんな事は煉獄家の者はしない。記憶がない頃、父上に教わった。あの場所は絶対に近付いてもならないと。近付くとしたら部外者の者だ。)
杏寿郎は机に伏せそうになりながら細田に視線を送る。
それに細田は優しく微笑み返した。
杏(あの蔵に部外者が入り込んでしまったのは1度きりだ。俺が中学生になったばかりの頃。同級生と家で遊んだ。その時、蔵に入り込んでしまったのは太田ではなく細田だった。細田は桜を15年も前から知っている。)
杏「うず、い……、」
天「あ、こら。」
細「良いって。寝かせてあげなよ。」
そう言って杏寿郎を庇う細田の笑顔はどこまでも優しかった。