第86章 7年前のやり直し
杏「…すまない。声に出てしまったか。恐らく細田のスマホから飲み会のことが漏れたのだろう。コンクールが終わってからメッセージの量がグッと増えてな。それを読むのに時間が掛かって目が疲れただけだ。」
天「んなもん律儀に全部読む必要なんてねーよ。向こうも同じようなの送ってきてんだろ。」
杏「そうだがもし重要な事が書かれていたらと思うと流せないんだ。」
天「思うツボじゃねーか。」
杏「そうかもしれないな。とにかくありがとう。詳しくは金曜話そう。」
天「…………おう。」
天元は杏寿郎が去る姿をドアにもたれて暫く見守っていた。
――――――
細「煉獄…、なんだかお疲れさまだな。」
天「今日も無事預けてきたのか。」
杏「うむ!甘露寺と小芭内と3人で家に居てもらっている!!」
細「おばない?」
天「こいつの幼馴染で甘露寺っていう女の恋人だ。」
細「へえぇ…初めて聞いたな。あ、もしかして小さい時ボヤ騒ぎに巻き込んじゃったっていう…、」
杏「うむ!そうだ!!コンロで枯れ葉を燃やして焼き芋を作ろうとした時の話だな!」
スーツのまま走っていつもの定食屋へ戻ってきた杏寿郎はいつもより高い位置まで腕まくりをしている。
そこから見える腕は逞しく、それ以上はキツくて少しも捲れそうになかった。
細田はその腕と自身の腕を見比べて溜息をつく。
細「俺ジムに行こうかな…。」
天「体作りにしてはおせーんじゃねぇの。夏終わっちまったぞ。ほら、煉獄。」
杏寿郎は天元からジョッキを手渡されると礼を言って2人と乾杯をした。
杏「早速なのだが細田に聞きたい事がある。」
天「もう聞くのかよ!!」
咳き込みそうになる天元に杏寿郎は眉を寄せた。