第85章 不穏
杏「水を差すまいと思って黙っていたが、そろそろ我慢してくれ。一ノ瀬先生が体を壊してしまう。」
「こ、壊しませんよ。それより…た、高くて怖いです…。」
腕を真っ直ぐ上げている杏寿郎の手の上で桜は縮こまっていた。
杏寿郎はそれに気が付くと桜をすぐに横抱きにする。
杏「すまなかった。もう怖くないぞ。」
そう言って宥めるように頭を撫でられると呆然として見ている部員達を前に桜は顔を真っ赤にさせた。
「体を気遣って頂いてありがとうございます!もう大丈夫なので下ろしてください、煉獄先生…!」
杏「そうか!!」
杏寿郎は桜をさらりと下ろすと再び響凱の元へ戻って話をし始める。
「あ、ぅ……、」
そうして桜は杏寿郎に振り回されるだけ振り回された挙句、面白がる部員達を1人で相手にしなくてはならなくなったのだった。
3年生はこの大会で引退となる。
駒校まで戻り、楽器を運び終えると3年生全員が挨拶と後輩への激励をし 音楽室は再びすすり泣く声で満たされてしまった。