第85章 不穏
その見るからに幸せそうな笑みを見ると杏寿郎は安堵の息をついた。
桜はいつものように両手でコップを掴み、こくこくと飲んでいく。
杏「愛らしいな。」
焙じ茶を飲んでいる時にそう言われると桜は余りにも心当たりがなかった為に首を傾げた。
杏寿郎はその反応も愛でるように頭を撫でると、額にキスを落として空のコップを取り上げる。
「あ…片すのに……。」
杏「セックスの後くらいは労らせてくれ。」
「いつもだと思います。」
杏寿郎はそんな桜の注意するような声色を少しも気にせずに笑いながら頭を撫で、コップを片しに行ってしまった。
(杏寿郎さんはどれだけ自身が私の為に尽してくれているのか自覚してないのかな…。)
桜はそんな事を思いながら帰ってきた杏寿郎を大事そうに抱き締める。
杏寿郎はそれに満たされたような笑みを浮かべるとリモコンを取って電気を消した。
そしてとうとう9月2週目の日曜、東京支部大会がやってきた。