第85章 不穏
杏(桜への秘密が増えてしまっているな。だがどこから何を知られるか分からない以上、警告は守らなければならないだろう。)
そう眉を寄せながら杏寿郎は桜の父、勇之に毎日の恒例となっている報告を行っていた。
勇之も勇之で由梨には何も言わず、娘を誘拐してその人生をも狂わせ、更には息子を惨殺した犯人に再び桜が狙われていると知って1人気が狂いそうになっていた。
勇(……だが、彼と話す度に実感する。確かに私の先祖は彼等に救われたんだと。酷い状況の筈なのに彼とやり取りをすると不思議な安心感を得られる。)
そう思って『10月の試合は止めて無条件で結婚を認めてやろうか。』と思った矢先、杏寿郎に寄り掛かりながら寝てしまっている桜の動画が送られてくる。
杏寿郎としてはその顔色を見せて安心させたかっただけだったのだが、勇之にしてみたらただの惚気に見えた。
勇「由梨!!私は今から素振りをしてくるので先に寝ていなさい!!!」
由「え、えぇ?もう23時よ。」
勇「時間は関係ない!何としてでも杏寿郎くんを倒さねばならないと今決心した!!」
そう言いながら竹刀を手に庭へ降りようとする勇之の手を由梨は急いで掴む。
由「朝早く大学へ行ってやった方がいいわ。勇之さん気合いが入ると変な声を出すでしょう?癒猫様が驚いちゃう。」
勇「……ぐ。」
桜が存在を証明した神の名を出されると流石の勇之も頭が冷えた。
そして竹刀をしまってからスマホを弄って由梨に見せる。