第85章 不穏
杏「太田の事を知れば細田なら止めてくれるだろう。」
しかしその飲み会に適したタイミングがなかなか訪れなかった。
学校は夏休みに入り、桜は夏のコンクールに向けて毎日朝から暗くなるまで学校へ通った。
そして蜜璃は蜜璃で夏の課題に没頭してしまい連絡がつかず、杏寿郎の代わりに家に居てもらう事も叶わない。
杏(悲鳴嶼さんなら家に2人きりにしても……いや、なるべくなら避けたい。それこそ太田の逆鱗に触れかねん。桜のコンクールが終わり、甘露寺の予定がつくまでは難しいのか…。)
そんな事を思いながら杏寿郎も毎日部活に明け暮れ、呼吸の鍛錬をしながら竹刀を振り続けた。
そして明らかに当たったら死ぬと思わせる素振りに部員達は背筋を凍らせていた。
杏「盆休みも部活があるのか!!」
「そりゃそうですよー。都大会は8月15日ですもん。」
杏「だが学校は閉鎖されるだろう。他の場所を借りるのか。」
「はい!ホールを押さえてあります。」
杏寿郎は吹奏楽部の頑張りを知っていた為 大会があると聞くと、ただ『その練習には俺も付いて行かせてくれ。』と頼んだ。
杏寿郎の様子が最近おかしいと気付いていた桜はそれに素直に頷くとソファで隣に座る杏寿郎にもたれ掛かる。
「…………いつになったら話してくれるんですか。」
杏「それさえも分からないんだ。すまない。」
「そうですか…。私にできる事はありますか。」
杏「よくよく気を付けていてくれ。とにかく1人になるな。」
「はい。」
桜は桜で得体の知れない不安と杏寿郎を1人で戦わせてしまっている事にもどかしさを覚えていた。