第85章 不穏
杏「本人のお出ましだ。桜がミスコンの先輩に探りを入れた事が分かられてしまった。先輩のスマホにアクセス出来るようにしていたようだ。」
天「まじかよ。ミスコンって…そんな前に関わった人間のスマホまでチェックしてんの?ちょ、それ見せろ。」
そこには『詮索はしても良いが準備が必要なのでそちらからは俺に接触してくるな』『桜にはこのメッセージについて何も言うな』という前置きの後に、『桜への接し方が不十分である事を自覚しているのなら一刻も早く自分から離れるべきだ。』『友人なら分かってくれ。』と書かれてあった。
それを読んで天元は暫く呆然としてしまった。
はっきりと友人と書かれてしまっていたからだ。
天「……いや、でもよ、不十分って何の話だよ。お前の過保護っぷりはあいつも知ってるだろ。それとも前に自分がしたように一緒になってお家に閉じこもってろってか。」
杏「分からない。誘拐と殺人を出来た時点で彼の思考は理解出来ない。」
天「まあ……そうだな。」
昼休みの美術室には大穴からグラウンドで遊ぶ生徒達の声が届いていた。
杏寿郎は腕を組みながらその大穴の外へ目を向ける。
杏(幸い賽子先生の一件以降は不死川を筆頭に皆も積極的に桜を1人にさせないように協力してくれて助かっているが、いつか1人の時間が来るのではと思うと気が気ではない。)
杏寿郎の横顔を見ると天元もグラウンドに目を遣った。
天「細田がさ、この前の飲み会でお前に元気もらったからまた飲みたいって言ったんだよ。3人で飲まねぇ?……細田もさ、何か重要なこと知ってるかもしれねーじゃん。」
確かに優しい細田は太田の毒気を抜くのに向いていて、なかなかに良いコンビだった上に大学まで同じだった。
杏寿郎は天元の誘いにすぐ頷く。