第85章 不穏
杏(明日は日曜で互いに予定もない。太田の写真を見せてみようか。いや、心当たりがあれば月曜まで響いてしまう可能性は十分ある。しかしいつまでも待つ訳には…、)
「杏寿郎さん、そろそろお話してください。何があったんですか?」
悩んでいる事が顔に出ていたようで桜は少し困った顔をしながら杏寿郎の両頬を白い小さな手で包んだ。
杏寿郎が僅かに動揺するとベッドが軋む。
杏「…球技大会より前に君は恐らく何かを見ている。」
そう切り出すと杏寿郎は桜をなるべく驚かせないように頬にあった手をしっかりと握った。
杏「俺は、君が犯人に関わる何かしら…いや、犯人そのものと接点を持ったのではないかと疑っている。今日の同窓会もただのそれではない。」
「……え……………でも…、杏寿郎さんの…中学からのご友人でしょう……?」
杏「これは完全に俺のミスなのだが、披露宴で『俺の恋人は4年連続ミスキャンパスだった。』と言ってしまった。その時、皆はスマホを俺に向けて『この子か。』と言った。」
その時の事を思い出すように杏寿郎は眉を顰める。
杏「その時、誰かまでは覚えていないのだが 1人だけ俺が見た事のないアングルの写真を見せたんだ。何度もネット上の君を探した俺でも知らない写真だ。そしてそれは桜色の衣装だった。」
それを聞くと杏寿郎の考えを理解した桜は固まり、目を見開いた。
杏「披露宴の時は特に気にしていなかったのだが球技大会の後はどうしようもなく気になってな。だが、いくら調べてもやはりその写真はネットに上がっていなかった。桜色の衣装は校内で行われた撮影の時のものだろう。学園祭の時は白い衣装だった筈だ。あの服は撮影以外でいつ身に着けた。」
桜色の衣装というものは私服に使いづらいドレッシーな物であった。