第85章 不穏
杏(このメンバーは中学の頃からずっと親しくしている仲だ。疑いたくはなかったが怪しく思えてしまうな。)
そう思って太田から視線を外すと今度はそちらから刺すような視線を感じる。
その纏わり付く嫉妬に満ちた視線に嫌な想像をした杏寿郎の首筋に冷や汗が流れた。
杏(勿論警戒はするが安直な考えである事も事実だ。桜との仲を知りたがったり嫉妬をしたりする男などいくらでもいる。他の者である可能性もある事を失念しないようにしなくては。)
しかし、その後も太田は事あるごとに桜の話を聞き出そうとしたのだった。
―――
杏「ではまた会おう!!」
天「んー。」
細「またなあ。」
中「次は彼女連れて来てやるよ!」
太「またな。……絡んで悪かった。」
杏寿郎は蜜璃を迎えに来る小芭内に合わせて一足先に飲み屋を出た。
杏(太田は結局謝ってくれたな。何にせよ宇髄によくよく礼をしなければ。)
この飲み会は杏寿郎が天元に頼んで開いてもらったものだった。
桜が顔を見せた、または見た者と話をしたかったからだ。
勿論 桜が大学の友人と行ったというレストランにも行く予定だ。
杏(中学からの友人を疑うのは忍びないが 桜は明らかに最近の何かの出来事に影響を受けていた。贔屓せずに虱潰しに話を聞くしかないだろう。)
そう思うと杏寿郎は家路を急いだのだった。