第85章 不穏
しかしそれからの桜は大した変化も無く、球技大会の一件が嘘だったかのように過ごした。
そうしている間に7月も半ばに入り、面談週間が始まると桜は行冥に同席を勧められて少し変則的な日々を過ごした。
「杏寿郎さんは保護者さまからも人気があるようですね。私に交際についての話を聞いてくるお母様がいらっしゃいましたよ。」
杏「生徒についての面談だというのに妙な話だな。」
自身がどれだけ人気があるのかをいまいち分かっていない杏寿郎に桜は少し溜息をつく。
帰りの車を走らせている杏寿郎は信号で止まるとそんな桜の頭を優しく撫でた。
杏「前々から言ってあったが今日は小さな同窓会がある。甘露寺と大人しく家で待っていてくれ。」
「はい!宇髄さんも行かれるんですよね。」
杏「うむ!!」
そう返事をする杏寿郎の微笑んだ横顔に桜も頬を緩める。
(杏寿郎さん楽しみなんだな。可愛い。私も蜜璃ちゃんとたくさんお話ししよう。)
そう思って視線を前に戻すと、それを感じ取った杏寿郎は無意識に眉を顰めた。
―――
蜜「桜ちゃん!煉獄さん!こんばんは!!」
「こんばんは!また来てくれてありがとう。」
杏「本当に助かる。必要があればこの家で絵を描いても構わないからな。では桜を頼む。」
杏寿郎は蜜璃が来ると入れ替わるように家を出た。