第85章 不穏
「杏寿郎さん、お家で松ぼっくりを燃やしちゃだめです!お家のコンロは松ぼっくりを使わなくても燃え続けるんです!!」
杏「よもや。」
「それはキャンプに行った時に使いましょう!杏寿郎さんは…テレビを、見て、いて、くだ…さい…っ!」
そう言いながら眉尻を下げている杏寿郎の背を全力で押し、なんとか台所から追い出すと桜は遅めの夕食を作り始めたのだった。
(杏寿郎さん、何でいきなり最近の私の行動について聞いたんだろう。今日より前もおかしな事してたのかな…。)
とにかく早く夕飯を出した方が良いと思った桜は究極の手抜き、親子丼を作っていく。
並行して味噌汁を作り、朝から冷蔵庫で寝かせてあった白身魚の昆布締めと浅漬けを取り出し皿に盛る。
そして丼ぶりに炊いておいたご飯をよそうとフライパンを持ってきて汁だくで柔らかい卵と鶏肉が乗った親子丼を作り、更にその上に三つ葉を散らした。
「杏寿郎さん、出来ましたよ。」
桜がそう言いながらテーブルに配膳し終わると杏寿郎は振り返って目を丸くした。
杏「凄いな!まだ15分と経っていないぞ!」
「遅くなってしまったのでスピード重視で作りました。…手抜きです。」
そう言いながら桜は申し訳なさそうな顔をして親子丼に視線を落とした。
しかし杏寿郎は早速席に着くと箸を持って手を合わせる。
杏「俺はとても好きだぞ!!火の入れ具合も汁の多さも好ましい!早く食べよう、席に着いてくれ!!」
その言葉にパッと顔色を明るくさせると桜はすぐに席に着いて仲良く『いただきます!』と声を揃えた。