第2章 大切な記憶
緑の多い背景と目の前に立つのは大きな白い猫。
優しい紅い目をしている。
桜の口は勝手に動いて談笑していた。
(走馬灯…?ただの猫じゃない…大きいし神秘的な雰囲気……この子は誰……?)
「そう思いませんか?ユキさま!」
(…っ!!…ユキ……ユキだ………っ!!…そうだ、あなたが……。)
ずっと胸の中で寄り添ってくれていた"ユキ"は、この白い雪のような友達だったのだ。
(ユキ…なんで今まで忘れてしまってたんだろう…。ごめん…思い出したよ……、)
そう朦朧とする頭で思うと意識はぷつりと切れた。
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『………桜?』
ユキは宿った体の主の命が消えそうなのを感じた。
『…まだだ。この子はまだ連れて行かないでくれ。……死なせたくない…!』
必死に桜が生きる為の理由を探す。
『そうだ!この子はあの尊い子達のために力を貸すことができる!だから、どうか桜を助けてくれ…!お願いだ……。』
ユキはかつて自分に罰を下したであろう姿も知らぬ存在に願った。