第2章 大切な記憶
そう思うと桜は、目をぎゅっと瞑りながら二つの背中を撫でる。
「戻っておいで…助かって……!」
二つの体が温かくなっていく。
撫でるうちに桜の体はみるみる沈んでいく。
目が水に浸かる寸前、男の子が飲んでしまった水を吐き出すのが見えた。
(良かった…!早く誰かこの子達を見つけ、て……っ)
そう思い、とぽんっと小さな音を立てて桜は水に沈んだ。
男の子が慌てながら自身の背中から滑り落ちる桜の手を掴んでくれる。
"待って!"
そう言われた気がしたけれど、桜はホッとしたように頬を緩ませて 優しく男の子の手を解いた。
(ユキ………。)
両親、最愛の弟、友人達……色んな人の顔が浮かびながらも、胸に手を当てて呟いたのはその名前だった。
その瞬間―――…
バッと景色が変わる。