第84章 球技大会、決勝
決勝戦はサッカー、ドッヂボール、バレー、バスケの順に時間を被せず行う。
それ故に高等部の生徒全員がその1種目を観に集まってくる。
そして駒校の運動場、及び体育館にはもれなく立派な観客席がついており 試合の様子を余すこと無く眺めることが出来るようになっていた。
(不死川先生のところも宇髄先生のところも決勝に上がったんだ。不死川先生のところは必死だっただろうなあ。宇髄先生のところはカナヲちゃんかあ…。)
桜は嬉しそうに微笑むと探していた杏寿郎の背中を見付け、駆け寄った。
「あの、煉獄先生…ちょっと良いですか…?」
桜が遠慮気味に話し掛けると杏寿郎に戯れついていた生徒達が気を利かせて離れていく。
杏「どうした。」
その声は車や家で2人きりの時に出す静かな声色だった。
「……さっきはどうしたのですか?怒ってらしたように見えました。」
いざそう真っ直ぐに問われると、大人の余裕を持っていたい杏寿郎は言葉を詰まらせる。
杏「……ああ、あの時か。君は何故か怯えたような顔をしていたな。試合の前で君をライバルと思ったので怯えさせるような顔になってしまったのかもしれない。あまり気にしないでくれ。」
「…そう、ですか。怒ってはないんですね……?」
杏「うむ。心配するな。次の試合では怖がらせないと誓う。」
そう言うと杏寿郎はさり気なく桜の頭を優しく撫でて頬を染めさせた。
そうして桜はまた杏寿郎の思うように操られてしまったのだった。