第84章 球技大会、決勝
杏(…………だが、不死川だけ大勢の目の前で名を呼ばれたのは面白くないな。)
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実弥と共に戦うのは土竜組で矢琶羽という前に怒鳴られていた男子生徒がいるチームだった。
そこと戦うチームの担当は義勇の筈だが、行方不明の為に急遽違う教師が担当となっている。
(首斬るとかいってたけど、元鬼だったりするのかな…。まさかね……。)
見てみるとその矢琶羽という生徒は大人しそうで鬼らしいという印象は抱かなかった。
実「やるからには優勝だァ!!お前ら足引っ張んじゃねーぞォ!!」
鼓舞ではない教師らしからぬその掛け声にも生徒達は遅れずに返事をする。
(訓練されている……。)
桜が目を丸くさせているとコート中央に大男、行冥が大股で歩いてきた。
行「決勝戦は全種目、私が審判を行う。皆スポーツマンシップに則って正々堂々と戦うように。」
そう言う声は静かだったが行冥の恵まれ過ぎた体格の良さと球技大会への不参加の理由から皆ビシッと背筋を伸ばして返事をした。
(ふふ、悲鳴嶼先生とっても優しいのに。優しくて強くて格好いい。少し歳の離れた……そうだなあ、理想的な親戚のお兄さんポジションかな…。)
生「先生、何で笑ってるんですかー?」
桜がそんな妄想をしていると周りにくっついて来ていた生徒達が桜の顔を不思議そうに覗き込んだ。