第84章 球技大会、決勝
「……っ!…諦めないで最後まで頑張ろう!やり切った達成感は必ず勝利と共にあるわけじゃないよ!!」
その大きな声に選手達は桜に目を遣る。
桜は拳を握って強い瞳で見つめ返した。
その揺るぎないただひたすら真っ直ぐな瞳に 選手達は今見せてはいけない姿、表情をしてしまっていた事にハッとした。
そしてこくりと頷き返すと選手達にもその強い瞳の色が移っていく。
教「第2セット、開始!!」
その声と共に落ち着きとやる気を取り戻した柿チームの男子がボールを放った。
―――ピーーッッ
やはり圧倒的差をつけられて柿組は負けてしまった。
だが1セット目よりは明らかに粘りを見せ、決着がつくまでも時間が掛かった。
それ故に選手達は伊之助に当てられた部分をさすりつつもさっぱりとした顔をしている。
「皆自身が1番分かっていると思うけど、すーっごく頑張ったね。コートに入ったら伊之助くんの怖さはきっと倍になるでしょう?」
それに同意する声がいくつも上がり、桜は微笑んだ。
「コート外から言う私の言葉に耳を傾けてくれてありがとう。2セット目の皆、とても格好よかったよ!!」
そう言ってふわりと笑う桜の柔らかさに僅かに抱いていた悔しさも溶けていく。
そして柿組の選手達は桜に声を揃えて『ありがとうございました!』と礼を言い、女生徒達は抱きついて戯れ始めた。