第84章 球技大会、決勝
その2人の様子を見て実弥は機嫌を欠き鬼の形相になった。
実「だから大丈夫だって言っただろォ…!!」
「ううん、言ってなかったよ。殺しちゃうかと思った。」
玄「俺も死んだって思った…。」
実「………………………………。」
2人が喋って柔らかくなった空気を感じ取ると周りの観客達は漸く深く息を吐いた。
生「一ノ瀬先生って不死川先生とも親しかったんですね。そういえば始業式の挨拶の時も妹だって…、」
杏寿郎の隣にいた生徒がそう言いながら見上げると杏寿郎は微笑みながら声がした方を見下ろす。
すると生徒は体を強張らせた。
杏「ああ!!そうみたいだな!!!」
笑みに反して杏寿郎の額には青筋が浮かんでいたのだ。
生徒はそれを見ると思わず口を噤んで喉をこくりと鳴らした。
杏(あの感じこれが初めてではないだろう。俺のいないところで下の名で呼んでいたな。不死川にもうその気が無くともこんな大勢の前で呼んでは駄目だろう。俺がしたら怒るだろうに。)
そう思いながら見つめる先で桜と玄弥は審判役の教師に頭を下げて他のチームメイトの元へ走って戻っていく。
杏「……次も取りに行くぞ!!!」
いつもと違って朗らかではない杏寿郎の声に生徒達は少し遅れて返事をした。