第83章 球技大会の予選と杏寿郎の懸念
杏「高校生はもう男だと言った筈だ。前世でも言った。今世では痛い目にも遭っているだろう。気を付けてくれるのではなかったのか。」
桜はその気迫と空気の重さから体が固まってしまい、燃える瞳を為す術も無く見つめた。
そして少し沈黙が続いた後、杏寿郎が答えを聞きたそうに空気を少し軽くさせると漸く動けるようになり口を開いた。
「相手、女の子ですよ。カナヲちゃんです。」
そう言いながら桜は杏寿郎の頬に手を当て、楽しそうに瞳の色が変わる様子を見つめた。
怒りや嫉妬、苛立ち、心配に燃えていた瞳はシュッと熱を失い 眉尻は頼りなく下がっていく。
それを見て桜は微笑ましく思い、ふにゃっと笑った。
杏「すまない。噂を鵜呑みにしてはならないと知っていた筈なのに見事鵜呑みにして怒ってしまった。」
「いいえー。それより早く帰りましょう。シャワー浴びたいです。杏寿郎さんのせいで暑くて大変だったんですよ。」
そう言いながら桜がジャージのファスナーを下ろすと目に入るのは己のものだという証の赤い華。
杏寿郎は満足そうにその華を撫でると額に口付けを落として再び謝ってから運転席に戻った。