第83章 球技大会の予選と杏寿郎の懸念
第2運動場に着くと桜は杏寿郎の視線が突き刺さったのを感じ、首を傾げながらそちらを見た。
すると杏寿郎の機嫌は見るからに悪く、桜を睨んでいる。
(……………………?)
桜は困ったように首を傾げるも、時間がなかった為 柿組のチームメイト達に駆け寄って鼓舞した。
「落ち着いて丁寧に丁寧にやろう!このチームは皆基礎がしっかりできてる。落ち着いて粘れば絶対に勝機がくるからね!」
それに皆が『オーッ!!』と返事をすると桜は1人1人の背中を両手でぽんっと叩いて気合いを注入しながら送り出した。
(……杏寿郎さんまた睨んでる。必要な時はパッて切り替えてるけど隙あらば睨んでくる。すっごく怖い。何があったんだろう。)
桜がそう眉尻を下げて見つめる先で 杏寿郎に鼓舞された村田が柱というイメージを拭い切れていない為か更に身を硬くさせている。
そうして選手がそれぞれの持ち場につくと試合開始を知らせる笛の音が鳴った。
山椒組と柿組はお手本のような試合だった。
お互い堅実な戦いをし、丁寧に拾っては強くはないけれど弱くもないボールを投げる。
しかし、やや柿組のメンバーの方が動きが良く 徐々に点差は開いていった。
そして順調に1セットを取り、2セット目も接戦ではあったもののしっかりと取りに行った。
―――ピーーッ
「やったあ!皆、3組とも予選通過だー!!」
礼をし終わった生徒達に桜はそう言いながら駆け寄り、続いてアオイの頭を優しく撫でた。