第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
「んー…やっぱり少しは痛むけど昨日に比べて耐えられるようになってるなあ…。ちゃんと一晩で筋肉が超回復したんだ…。」
千「超回復…?」
桜の言葉に千寿郎が首を傾げた。
「うん。運動して筋肉を使うと痛くなるでしょ?その筋肉痛があるまま また運動をすると逆に筋肉を痛めちゃうの。」
「それに対して、筋肉痛がなくなるまで休ませてあげると、筋肉が前よりも丈夫になって回復する!これが超回復だよー。」
千「へええ…!焦って毎日しちゃいます…。」
「その気持ちはすっごく分かる…!休むのって罪悪感あるもんね…。」
そんな会話をしながら、また脚を綺麗にしてもらい屋敷へ上がるとおちょことお酒を用意した。
そろそろ行こうかな、と思い客間から出ると、千寿郎がもじもじしながら小皿が三つ入ったお盆を持って待っていた。
千「あ、あの…おつまみに、どうかな、と…。」
そこには、蛤の酒蒸し、ナマコの塩辛、柚子の皮と鷹の爪が掛かった大根の甘酢漬けがあった。
「な、なにこれ…素敵過ぎる…絶対日本酒に合う……。」
桜はお酒とおちょこを床に置くと、お皿をひっくり返さないように努めて優しく千寿郎の頭を撫でた。
「ぜっったい喜んでくれるよ。私は手が塞がってるから怖いかもしれないけど一緒についてきてくれるかな…?」
伺うように訊くと、千寿郎はパッと顔を明るくさせた。
千「…っ!はい!」
そして何となく緊張した二人は黙ったまま部屋の前まで歩き、膝をついた。