第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
桜はまた庭へ戻ると深く深く呼吸をし、少しずつ肺を大きく出来るように集中していった。
早めの晩御飯。
良いお酒で晩酌するまで時間は十分にある。
念の為、あまりにも熱中しすぎてやり過ぎてしまった場合は、口を抑えて呼吸を無理やり阻害してもらうように千寿郎に頼んだ。
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深く、深く、深く―――………
どんなに集中力が高くても一晩、二晩で急に強くなる筈はない。
そんな結果がすぐ出ない鍛錬をずっと積み重ねてきた人が杏寿郎だ。
柱になっても鍛錬や任務に明け暮れ、立ち止まることなく強くなっていく。
ここ二日しか見ていないけれど、それがどれだけ凄いのか鍛錬を始めてみてほんの少しだけ分かった。
(杏寿郎さんは本当にすごい。あの精神力は、突き動かす力は、どこから来ているのだろう…。)
気が付いたら頭を使ってしまっていた事に気が付き、慌てて呼吸に集中するー………
大きく、大きく、深く、深く―――…………
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「もがっ…………む?」
千「あっ!桜さん!…よかった…。」
気が付くと口にお饅頭が入っていた。
甘味も好きな桜は、その状況に突っ込まずにお饅頭をもぐもぐと食べる。
千「桜さん、また声をかけても反応しないので口を抑えようとしたのですが…口に触れていいのか悩んでお饅頭を詰めてみました…。」
桜はお饅頭を飲み込むと、
「あはは!そうなんだ!とっても美味しかったよ、ありがとう!」
と言い、千寿郎に頬ずりをした。