第83章 球技大会の予選と杏寿郎の懸念
天「こうすりゃ良い話だろーが。おら、話してこい。」
「…は、はい。ありがとうございます!」
カナヲはとても急いで上がって来たのか息を切らしていた。
それが天元に呼び出されて驚いたからではなく、自身の姿を見て急いで来てくれたのではないかと桜は少しだけ期待した。
「お、驚かせてごめんね。蝶屋敷によく出入りしてたんだけど 私のこと覚えてるかな…。」
その問いにカナヲは可愛らしく何度もこくこくと頷く。
それを見て桜はパッと目を輝かせた。
「上弦の弐と戦った時のあの白い大きな猫も私なんだよ。姿だけでなく声も違ったけど……。」
カ「し、知ってます…!私…、治してもらいました…。」
初めての会話に桜はまた嬉しそうな顔をする。
「あの、お名前…もう知っちゃったんだけど、改めて聞いてもいいかな……。私は一ノ瀬 桜と言います。」
カ「私、栗花落 カナヲです。ずっと逃げてしまってごめんなさい。……あの時はカナエ姉さんと姿が重なって気になってて…でもそれが失礼な気もして近付けなくて……。」
話しながらカナヲは手をもじもじと絡める。
カ「……でも、治療中 近くで感じた時に別の人なんだってしっかり分かって…、だから話しかけようと思った時に今度は桜さんが消えちゃって そのまま……。春に先生として駒校にいらした時も話し掛ける勇気がなくて…。」
天元は目を瞑ってそのもどかしさに苛々としながら聞いていたが、桜は向き合ってくれていた心を知ると嬉しくなってカナヲを優しく抱き寄せた。