第83章 球技大会の予選と杏寿郎の懸念
「あ、いた…。宇髄先生 探しましたよ。今は関係のない子達の試合なんですか?」
桜が漸く探し出した天元はチューイングガムを噛みながら2階の観客席の上で横になっていた。
当然 天元の視界には天井しか映っていない。
天「知らねーよ。ほっときゃ胡蝶の継子が決勝まで進むだろ。俺はそれまで出れねぇんだから関係ねーの。」
「継子じゃなくて栗花落カナヲちゃんです。もう。応援くらいしましょうよー。」
そう言いながら桜がコートを見下ろすとなかなかに良い試合が行われていた。
天「……お前、その栗花落とは結局話せたのか?無限城でお前がどっかに飛ばされる前、あいつお前に話しかけようとしてたぜ。」
「ほんとですか!?」
実際、桜は無限城でカナヲと話す事も名を聞く事も叶わなかったが、ここ駒校に来てからは『名を本人から聞きたい』などと拘ってもいられず、教師としてカナヲの名を知ってしまっていた。
「実はいまだに話せてないんです。前に話し掛けたら逃げられちゃったから向こうのタイミングで来られるようにと待っているのですが…。」
天「は?こっちでもまだなのか?あいつだって何度かお前に治療を受けてたろ。口実なんていくらでも……あーもーめんどくせぇ。」
天元はそう言うとのそりと上体を起こして観客席からコートを見下ろす。
天「おい、栗花落ー!!ちょっと上がって来い!!」
「え、えっ!?ちょっと…っ」
天元にちょいちょいと手招きされると観戦していたカナヲは桜を見て目を大きくさせた。
そしてコクッと頷くと階段に向かって走って行く。