第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
桜は手を離すと千寿郎の涙を拭ってからまた抱きしめた。
「意地悪しちゃった。ごめんね?えっと…千…?」
桜はそう楽しそうな声を出す。
千「…うぅ…っ!」
千寿郎は無意識に自身を幼い頃に呼ばれていた名で言ってしまった事に恥ずかしさを覚えたが、桜の胸の中にいると 暖かくて優しくて、どうでもよくなってしまう。
「本当に千寿郎くんは良い子だなあ。煉獄家の宝だね。」
千「………いえ…僕は剣と共に生きてきた一族なのに剣の才がないのです…。だから…、」
「いや、間違いなく言えるのは、千寿郎くんが居なかったらこの家は…終わる。千寿郎くんによって支えられすぎているよ…。」
千寿郎はそれを聞いてきょとんとした。
(少しでも、今まで寂しい思いをしてきた分を埋めてあげられたらいいのに…難しいな…。)
桜はしばらく千寿郎を抱きしめていたが、ゆっくりと体を離すと頭を優しく撫でた。
「美味しいご飯、ご馳走様でした。…じゃあ、私は鍛錬に戻るね。」
そう言って微笑むとお膳を持って立ち上がる。
そして襖へ向かって歩いたが、ぴたりと止まって千寿郎に振り返った。
「いつでも遠慮せず甘えに来てくれたらすごく嬉しいな。」
桜は千寿郎が目を大きくしている前で、眉尻を下げて少し寂しそうに笑った。