第82章 新しい外への向き合い方
杏(もう全てが駄目だとは言うまい。桜が我慢しすぎず、且つ安全を考慮した生活を目指そう。)
桜は撫でられると嬉しそうな顔をして微笑み、杏寿郎からコップを受け取るとすぐに手早く洗って食器カゴに置いた。
「……もうくっつかないんですか?」
後ろに張り付いていたのが可愛らしく思えていた桜がそう訊くと、感情がだだ漏れになっている桜の顔を見た杏寿郎は眉を寄せる。
「からかってる訳じゃないんですよ。ただ大好きなんです。寂しかったのでしょう?来てください。」
そう言って桜は杏寿郎に背を向けて振り返り、誘うように微笑みかけた。
杏「君を感じる方法などいくらでもある。」
杏寿郎は後ろから緩く抱き締めると耳から首筋に唇を這わせ、シャツの襟でぎりぎり隠れる場所に華を咲かせた。
耳に触れられ肩を跳ねさせてから固まっていた桜はチクッとした痛みで我に返った。
そして首を押さえると慌てて振り返る。
「きょ、杏寿郎さん、だめです、見えちゃ、」
杏「大丈夫だ、そこなら隠れる。球技大会ではジャージの襟を立てていなければならないがな。」
杏寿郎は満足そうに目を細めて笑うと『風呂へ入ろう。』と言って赤くなって俯く桜の手を引いた。
(さっきまでは可愛かったのに急に変わるなんてずるい…。)
そう思いながらも桜は敵わない事を悟ると杏寿郎の手を握り返して身を委ねることに決めたのだった。