第81章 友人の結婚式と杏寿郎の考え
そんな桜はおもむろに自身の左手を見せた。
そこには勿論指輪はない。
「杏寿郎さんが先に結婚指輪を用意してしまったからまだ付けてないだけなんですよ。よくも よりにもよって痛々しいほど一途になれる人を "女を食い散らかす下衆野郎" だなんて言えましたね。」
可愛らしい口からそんな言葉が出ると女性達は思わず身を震わせた。
桜はそれを見て再びにこっと微笑む。
「きつい言葉を使ってごめんなさい。でも私、杏寿郎さんの事大好きなんです。少しでも悪く言われたらとーっても腹が立ってしまうんです。もう…、」
そう言葉を続けながら桜が薄く目を開けた。
「本当に、腹が立つんです。」
その恐ろしいほど整った綺麗な顔と笑っていない瞳を見て女性達は青ざめる。
そして小さな震える声で謝罪を述べた。
桜はそれを聞いて満足すると再び微笑み、杏寿郎を捕まえている天元の元へ走って戻った。
「場の空気を悪くしないよう小さな声で叱ってきました。」
天「叱った、ねえ。」
天元は青い顔をしている女性達を見てにやっと笑うと店内に向かって手を振る。