第81章 友人の結婚式と杏寿郎の考え
杏「むぅ、指輪をしようか。」
天「むしろ何で外してんだよ。」
杏寿郎は自身のジャケットに視線を落とし、内ポケットに手を遣った。
杏「これはあちらで結婚指輪だったものなんだ。なので今世でも結婚するまでは取っておくことになっている。だが、こういった状況なら桜も許してくれるだろう。」
天「なるほどねぇ。でもま、指輪してなくてもマーキングはされてるみてーだけどな。」
その言葉に杏寿郎は機嫌良く笑って『愛らしいだろう。身に付ける物ばかり3つもくれたんだ。』と言いながら指輪を嵌める。
そして視線を上げるとウェディングケーキへの入刀がされようとしていた。
杏寿郎はそれを静かに見守っていたがやはり視線が煩い。
杏(結婚に憧れるのなら今は2人を見るべきなのではないのか。)
そう思いながら杏寿郎はそちらに視線を向けないように努め続けた。
―――
漸く歓談と食事の時間となって場の空気が緩むと、何故か天元は遠い目をした後 不快そうに耳を押さえた。
杏「宇髄?具合でも悪いのか。」
天「いや、……わりぃ、煉獄。深く考えてなかったわ…。」
杏「何の話だ。」
天元が答えるより前に同じ丸テーブルについていた男友達が杏寿郎の指に視線を落として口を開いた。