第80章 遅れたお祝い
杏「大正時代ではぎりぎり間に合わず祝えなかったからな…。お返しはたくさんしたい。」
杏寿郎は桜の髪の水気をタオルで優しく握るように取りながらそう真剣な声色で言った。
すると桜は困った様に笑う。
「普通でいいですよ。杏寿郎さんから頂けるのならピン1つでも十分嬉しいくらいです。」
杏「君、今日3つもプレゼントを渡したことを忘れていないだろうな。いつも俺を窘めるが今日の君は人の事を言えなかったぞ。」
「あ、ぅ……。」
そう指摘されて初めて桜は自身が普段 杏寿郎に注意するような買い物の仕方をしてしまっていた事に気が付いた。
「で、でも、誕生日プレゼントですもん!普段から杏寿郎さんみたいにプレゼントしているわけではありません…!それに結局お食事代も出しちゃうし……。」
杏「む、まだ気にしているのか。それはそうとあのレストランには驚いた。あの演出は君が頼んだのだろう?」
(あれ…メジャーなサプライズみたいだったけど杏寿郎さんもしかして知らないのかな……。)
話をすり替えられてしまった事に気付けず、桜はきょとんとしてしまった。