第80章 遅れたお祝い
そうして週明けからテスト週間になり 部活が禁止になると2人で居られる時間が増え、更に桜のスマホをいじる時間も殆ど無くなり、2人は良い関係を保ちつつ週末を迎えることが出来た。
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土曜日の朝、桜は『午前は友達の家に用があるの!どうしても1人で行きたいの!』と言い張って1人で家を出ていき、2人は結局昼に待ち合わせをしてショッピングモールで何てこと無い1日を過ごした。
しかし、夜は家で食べると思っていた杏寿郎がその緩い空気のまま早めに帰ろうとすると桜が止める。
「もう少し時間が経ったら連れて行ってほしい所があるの。」
そう言う桜の顔は緊張から少し強ばっていた。
杏「勿論良いが…体調は大丈夫か。」
「大丈夫!お願い、杏寿郎さん。」
杏寿郎は桜の頬に手を当てて少し困った顔をしたが、再び縋るように頼まれるととうとう首を縦に振った。
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杏「レストラン…?空腹で具合が悪くなっていたのか。それなら時間を置かずにもっと早く言わなければ駄目だろう。俺も気が付かずすまなかった。とにかく早く中へ入ろう。」
「は、はい…。」
(お腹空いて具合悪くなってたって思われるのはちょっと恥ずかしいけど無事に入れて良かった…!)
そしてレストランに入ると、近付いてきた店員に『2名だ。』と伝えようとする杏寿郎を慌てて止め、『予約の一ノ瀬です!』と伝えた。
杏「予約?いつの間にしたんだ?先程腹が減った時か?」
「うぅ…。」
桜は『前々からお祝いの為に予約していたの。』とは言えず、ただ顔を赤くして頷いた。
すると杏寿郎は眉尻を下げて『具合が悪くなるまで待ってこだわるとは…君は本当に食べるのが好きなんだなあ。』と笑った。