第80章 遅れたお祝い
「杏寿郎さんはやっぱり暖色が似合うよねえ。あ、でも濃い色なら寒色も似合うのかな…?この前 濃紺のスーツを着てるのを見たんだけどとっても似合ってたの。」
早「あーなんとなくは分かるよ。逆に暖色でも橙とか桜色は似合わないんじゃない?髪の色と喧嘩すると思う。」
「なるほどー。」
緩い空気を出しながら高級ブランド店に若い女性が来れば誰だって冷やかし客だと思うだろう。
だが、桜が1本2万するネクタイを見て『ネクタイは安いんだねえ。何本か買わないとプレゼントしたのばかり付けちゃうだろうし平日分、5本は買わないと…。』と言うと早苗は桜の頭をパシンッと叩いた。
「なんでぇ……?」
早「この世間知らず!普通ネクタイはこの値段で安いって言わないの!」
「でも予算教えたでしょう…?」
早「貯金しておきなさい!!」
「私もそう思ったんだけど、杏寿郎さんが『貯金はもう子供を育てられるくらい十分にしたので君のお金は君が使いたい時に使いなさい』って。私ずっと使ってなかったの。でも今はとても使いたいです。」
それを聞くと杏寿郎の甘々さ加減に早苗は頭痛を覚えた。
早「桜、あんまり貯金の話は真に受けちゃ駄目だよ。足りないって可能性を、」
「待って待って!本当なの!ちょっと、昔に……杏寿郎さんが私との生活の為だけを考えて貯め続けたお金があって、それがずーっと残ってて、少なくともじゅ、」
具体的な金額を言われそうになり、早苗は思わず桜の口を塞いだ。
早(子供を育てるにはとてもお金掛かるって聞いたことある……それをまだ若いうちに…?そんな馬鹿な。)
早「…やっぱり聞き間違えてるよ。」
「で、でも向こうの親御さんも知ってたのよ。それは確かに杏寿郎さんのお金だって言ってたの。」
早苗はぽかんとした後 その事について考えるのをやめた。
「ではこちらの5色ください!それからプレゼントでお願いします!」
早苗の心を置き去りに桜はそう嬉しそうに注文した。