第80章 遅れたお祝い
―――
杏寿郎は最近桜がやたらと真剣にスマホばかりをいじっている事を気にしていた。
今日は金曜日、かれこれこの調子が4日間続いている。
杏(特に話してこない上に俺そっちのけでいじる事が増えたな。日曜は久しぶりに遠出しようか…。)
帰りの車の中、エンジンを掛けながら杏寿郎はそう決心した。
しかし―――、
「あ…ごめんなさい。その日は…大事な用があって…。杏寿郎さんとだけは過ごせないの。」
そう言って申し訳なさそうに眉尻を下げる桜は断ったくせにどこか楽しそうな表情を浮かべ、頬も軽く染めてしまっていた。
それでも杏寿郎は余裕のある笑みを失くさずにただ『そうか。気にせず行ってくると良い。』と快く許した。
杏(週末、宇髄は捕まるだろうか。いや、相談なら不死川の方がいいだろうか。)
そうして桜の気持ちが久しぶりに見えなくなってしまった杏寿郎は少しだけ不安に駆られてしまったのだった。
――――――
「さなちゃーーーん!!」
都内の大きなショッピングモールで待ち合わせ中、早苗は久しぶりに桜の元気な声を生で聞いてパッと顔を明るくさせながら桜を探した。
すると桜はナンパを完全に無視しながら小走りでやって来た。