第79章 サイコロステーキ先輩
その動画に映る人物が自身等の学校の教師だとは知らない駒校の生徒達もそれを見て『自信が悪い意味ですごい』『ストーカーより質が悪い』『この人と彼女がひたすら可哀想』と言って笑ったり呆れたり同情したりしていたが、桜はそれを担当クラスの生徒に見せられるとただただ目を丸くした。
(これ…杏寿郎さんだ……。試合って…………?)
そう思うと見せてくれた生徒に礼を言ってから 授業が終わったばかりの教室を見渡す。
「あ、ねぇ…佐々木くん!剣道部だよね。ちょっとお話いいかな。」
佐「……はい!」
剣道部員達は特に口止めされていなかったが、『私的な試合だった』と言われていた為 各々が杏寿郎の為を思って試合の事は軽々しく口外しなかったし、動画も拡散しなかった。
そしてそれは今拡散されている方の動画を見れば正しい判断だったのだと分かった。
動画上で言い合いをしている2人は勿論、その2人の話題に上がっている女性についても 駒校の生徒なら特定出来てしまうからだ。
佐(あの動画で煉獄先生だと思われる人が言っている "彼女" は恋人の一ノ瀬先生だ。)
「ごめんね、呼びつけて。」
桜は不用心にも教室の中で会話を始め、佐々木はそれに少し戸惑った顔をした。
佐「い、いえ……。」
「その、単刀直入に訊くけど…、無事に帰したのかしら……。びっくりするくらい強いでしょう…?」
その問いに使われた言葉は曖昧だったが、誰が誰を無事に帰したのか、そしてそれがいつの事なのかはすぐに分かった。