第79章 サイコロステーキ先輩
澄滴が左小手にばかり注意を割いていると、今度は見事な胴を入れられる。
付けられた華を思い出し、本当は胸を突きたかったところを胴にしたのだ。
胴はそれだけに留まり、面に至っては1回も入れない。
1番得意とする面を決めに行かない杏寿郎に部員達は首を傾げた。
杏(あくまで桜にされた事への報復だ。頭は…何もされていない筈。手を出すべきではないだろう。)
澄「さっきからネチネチネチネチ!!腕ばっか狙ってないで正々堂々勝負しやがれ!!!」
杏「まさか君から許可が降りるとはな。」
そう呟くと杏寿郎は強烈な踏み込みをし、竹刀をしならせる程強い面を入れた。
杏「うむ!!やはり面が1番気持ちが良いな!!!だが小手もしっかり受けてもらうぞ!!!」
それから杏寿郎は絶妙に試合を長引かせて長く苦しめ、1本決める毎に澄滴を挑発して立ち上がらせ、最終的に面3本、胴1本、左小手6本を決めた。
後半澄滴は左手に殆ど力を入れられず 右手だけで竹刀を持っていたが、杏寿郎が本心から『もういい加減降参してはどうだ。』と言っても聞かなかった。
そして杏寿郎も試合が再開されれば一切手加減はしなかった。
しゃがんで竹刀を収め、立ち上がって5歩下がってからきちんと相手に礼をする杏寿郎に対し、澄滴は後ろ姿を見せて退場し 防具を脱ぎ捨てていく。
それを部員達は冷ややかな目で見ていた。
そしてその時、録画を停止する音がいくつも鳴った。