第79章 サイコロステーキ先輩
そして放課後、杏寿郎より早く指定された場所に着くと 近くの教室に1番仲が良いと思っている同僚、卸 範波弘(おろし はんばぐ)を押し込んだ。
澄「いいか、全部撮るんだぞ!!」
範「はいはい。」
実際に仲が良いと思っているのは澄滴だけであり、範波弘は好奇心のみを胸に抱いて其処に来ていた。
そうして戸を録画出来るギリギリまで閉めた所で丁度杏寿郎がやって来る。
澄(濡れ衣とは言えこのままじゃ立場が弱い。どうせ辞めさせられるのなら原因のこいつも道連れにしてやる…!)
そう思ってニヤついていたが、杏寿郎が近付くにつれ 澄滴の顔色が悪くなる。
その澄滴にだけ向けた殺気に範波弘は気付かず首を傾げた。
まだ長い廊下の向こうに居るというのに、澄滴は既に冷や汗が止まらなくなっている。
澄(柱ってマジだ…。やばい、やばい…!触れられもせずに…証拠も撮れずに心臓を止められるかもしれない……!!)
杏「うむ!来てくれてありがとう!」
澄滴が倒れそうになった寸前で杏寿郎は殺気を放つのを止め、笑顔でそう挨拶をした。
澄「………は、」
杏「呼び出してすまないな。嫌がる "彼女" の腕を掴んでラブホテルまで引き摺ったと聞いて流石に俺も詳しく君の口から話を聞かざるを得ないと思ったんだ。」
嘘のように軽くなった空気に 澄滴は荒く息をしながらも持ち前のポジティブさで調子を取り戻していく。