第79章 サイコロステーキ先輩
「あんまり怖いことを言っちゃだめですよ…!声も抑えて!周りの先生が驚いています… !」
杏「うむ、良い子だな。止めてくれてありがとう。」
天「あっそォ……。」
叩かれて顔がほんのりと赤くなった天元は青筋を浮かべていたが、ずっと見守っていた実弥と小芭内に笑われると怒りながらそっちへズカズカと歩いていった。
それを見届けると杏寿郎は息をつき、腰を抜かして座り込んでいる澄滴に合わせてしゃがみ込んで耳元に口を寄せた。
杏「うむ。やっと話が出来るな。俺の女性に手を出した事、只で済むと思うな。君は大人で、あれは犯罪だ。罪は重い。いいか、放課後C棟の2階突き当りまで来い。来なくても連れて行く。それから桜とは今後一切口を利くな。分かったな。」
そう言い終えると杏寿郎は冷たく燃える瞳を澄滴に向けた。
澄滴は何も言えずにただただ頷き、会話が聞こえなかった桜は首を傾げたのだった。
C棟とは今は使われていない校舎、つまり廃校舎だ。
そこへ来いという言葉は澄滴が一日中冷や汗を流すには十分の威力を持っていた。
校長と理事長は杏寿郎がこれからについても念の為に牽制したいであろう事を見越していたのか、法に触れない程度の報復をする機会を与える為か、その日1日は澄滴をいつも通り過ごさせていた。
澄滴にしたら早退したいどころか朝の時点で荷物をまとめて去りたいところだったが、見てしまった冷たく燃える目が踏み止まらせてしまう。
澄(逃げても必ず追ってくる…。家に居てもきっと…。)
しかし学校に居たからと言ってC棟まで行ってしまえば人目は無い。
なので同僚を1人連れて行き、暴行されれば警察に突き付けられるように教室から盗撮してもらうことにしたのだった。