第79章 サイコロステーキ先輩
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翌日、澄滴は普通に学校へやって来た。
(あれ……様子も普通だ。何も話がいっていないのかな。てっきり今日から来ないのかと…。)
そう思っているとすかさず澄滴が話し掛けてくる。
しかしもう仕事仲間でもなくなる澄滴と会話するメリットを見出だせなかった桜はまるで澄滴が透明人間であるかのように無視した。
それに対して照れ隠しだと思って更に絡んでくる澄滴に杏寿郎がゆっくりと近付いていく。
天「おい!煉獄!!待てって…ここ職場!!」
天元はそう言って追い掛けながらも、杏寿郎が手を出さない事は信頼していた為 力尽くで止めようとまではしなかった。
杏「賽子先生、少し良いだろうか。」
澄「ああ、煉獄せん、せ……、」
「杏寿郎さん、どうしたの?」
桜は無表情に燃える瞳を携えた杏寿郎に合わせて敢えて名字呼びをやめた。
澄「……………は?…いま杏寿郎って、……本当に…、」
杏「何を今更。散々桜の方から俺について聞いていた筈だろう。俺達は大正の頃より結ばれた強い絆がある。」
天「おい煉獄ー…ここ職場だぜ…?周りだってお前らに気を遣うようになるだろーが。少し冷静になれって。」
杏「その心配は無用だ。この男がしようとした事を吐かせた証拠を桜がきちんと押さえた。賽子先生は今日中に荷物を纏めてここから出ていく。」
その低くよく通る声に職員室はざわついた。
天「桜、お前やるな。それに "しようとした" って事は未遂だったのか。」
杏「うむ!俺の恋人はいざという時はやる女だ!!」
杏寿郎は天元を振り返ってそう笑うと暫く前から呆けている澄滴に視線を戻した。
その瞳は何よりも冷たい。