第79章 サイコロステーキ先輩
杏「君が家庭に入ってくれれば勿論嬉しい。夕飯の香りと共にエプロン姿の君が笑顔で出迎えてくれたらと考えるだけで幸せになれる。あの男の事件を考えれば学校側も中途半端な時期とはいえ被害に遭った君を引き止めたりはしないだろう。だが…、」
そこで杏寿郎が言葉を詰まらせる。
杏(…………だが…、桜は本当にそれで良いのか。俺がそう訊いてもこの子は俺の為に『良い』と答えてしまうだろう。だが生徒相手に見事な対応をした。今回も結果だけ見れば自身でケリをつけられている。)
そう思うと杏寿郎は桜を真っ直ぐ 真剣な目で見つめ、再び口を開いた。
杏「……桜。俺も桜が一等大事だ。君の純粋な意志を大事にしたい。俺が居なかったら君は教師を続けたろう。」
その言葉に桜の眉は寄る。
「…そんな、もしもの話は無意味です。」
杏「答えてくれ。そうなのだろう。それならば、」
「杏寿郎さん!実際にはいらっしゃるのですからそんな事はどうでも良いんです!」
杏「どうでも良くはない!君は前回も今回も結果的には解決出来たろう!それならば俺も腹を括って君を信じ、出来る限り周りにもフォローを呼びかけて仕事を続けられるようにしようと思ったんだ!!」
「解決できても前回も今回も もれなく杏寿郎さんを苦しめました!次何かあったら杏寿郎さんをもっと苦しめてしまうかもしれないじゃないですか!起こってからじゃ遅いんです!!」
頑固な2人が対立し合うと話は平行線となってしまう。