第79章 サイコロステーキ先輩
チラッと様子を窺えば桜は泣きそうになっている。
「まず、ごめんなさい。確かに生理は嘘です。痣と…華を見せたくなくて断ってました。でも、破かれた止まりで全ては脱がされたりしてませんし、あまり触られてもないし もちろん最後までもされてません。」
マンションの駐車場に着き車を停めると杏寿郎は黙って桜を見つめた。
「でも、言えば杏寿郎さんが人殺しになっちゃいそうで言えなくて……。あまね様に相談して賽子先生から証拠となる言葉を引き出させようとしていたんです。さっき、部活終わりに録った証拠を提出してきたので多分すぐ居なくなります。」
杏「…俺が、人殺し……。」
杏寿郎はそう呟くとハンドルに額を当てて溜息をつく。
「ご、ごめんなさい。杏寿郎さん、前世で私に触れた人がいたら それだけでも殺しちゃいそうな目で見ていたから…。」
杏寿郎は突っ伏したまま腕を伸ばすと桜を手招きし、近付いた頭にぼすんっと大きな手を乗せて優しく撫でた。
杏「……俺もあの時から…20歳から8つも歳を取っている。流石に…殺しはしない。君と一緒に居たいからな。だから頼むから頼ってくれ。」
「はい……。」
杏「それからあまり泣かないでくれ。君にそういった類の涙を流されると非常に居た堪れない。」
杏寿郎は体を起こして身を乗り出すと、桜の涙を優しく拭ってやる。
そして久しぶりにキスをした。
杏寿郎はキスによって涙を止めさせようとしたのだが、澄滴にもされた事を思い出した桜は己の不甲斐なさから余計に涙を流してしまったのだった。