第79章 サイコロステーキ先輩
杏(……どれだけ触られた。ファスナーが壊れるほど無理に脱がせられたのなら桜は随分と抵抗したのだろう。………何故俺には言わない。)
そう思っていた所に澄滴がやってくる。
澄滴は明らかに機嫌が悪く、眉は寄って苛ついた表情を浮かべていた。
そして近くの席の桜に真っ先に声を掛ける。
杏寿郎はその近すぎる距離感に眉を顰めた。
澄滴はずっと桜に耳打ちするように顔を近付けて話していた。
(声が小さい…レコーダーに入るかな……。)
澄「聞いてる?あれはやり過ぎだって。まじで痛かったんだからな。」
「でも、私を引き摺って入ったのって…あれ、ラブホテルですよね?ベッドあったし…。強姦未遂ですよ。正当防衛です。」
澄「あのさあ…いつまでその演技続けんの?」
冷静を装いつつ証拠集めをしようとする桜の眉を寄せさせてしまいそうな程に澄滴の声は小さく、胸ポケットに入れてあるレコーダーに記録されているか微妙な大きさであった。
「すみません、少し失礼します。」
桜はそう言って女子トイレに避難するとレコーダーを再生してみる。
するとやはり桜の独り言のようになってしまっていて澄滴の言葉は入っていなかった。
(あまね様…思ったより苦戦しそうです……。)
一方、杏寿郎は桜が積極的に澄滴と話すようになってしまった事について理解出来ず、頭を抱えていた。