第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
千「…父上が………。」
千寿郎はぽかんとしていた。
それを見て桜はバッと体を離すと、慌てたように自身の胸の前で手をふりふりと振った。
「も、もちろん、全部私の推測だよ!!」
(そう…本当のところは、あの かったーいガードを掻い潜って繊細な心に問いかけるしかない…けど、それはいつになるのかな……。)
千寿郎はそんな桜をじっと見つめながら口を開く。
千「父上は……兄上が柱になった時も、"どうでもいい" としか言わなかったそうです。父上が兄上を嫌っていないのなら…本心は…違ったかもしれないんですよね…。」
そう言いながら落ちた視線は、また千寿郎自身の拳に向いていた。
「柱…そんな凄い立場になれた時もそんな事を言われたんだ…。槇寿郎さんは剣について劣等感を抱いていたけど…それと関係あるのかな…。」
うーんと考え込む桜を見て、千寿郎が驚いた声を上げた。
千「…えっ!…父上が劣等感、ですか?父上は元柱です!兄上の前の炎柱でした!!」
「え!そうなの…?柱のお祝いを言わなかったのは杏寿郎さんへの劣等感なのかと思ったけど…違うんだ…。」
(じゃあ何に対して…逃げるように剣を置いたんだろう…。)
「ごめんね、これ以上は分からないかも…。」
申し訳なさそうに視線を落とすと、千寿郎が手を重ねてくる。
千「いえ…!十分です…っ!」
見れば千寿郎は涙ぐんで微笑んでいた。
桜はそれを見て千寿郎を優しく抱き寄せると背中を撫でる。
(私はずっとここに住んではいられないかも知れないけど、なんとかこの家が明るさを取り戻せるといいな…。)
そう思いながら、しばらく目を瞑り千寿郎を撫で続けた。