第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
「うん…。その…息子さんに言ったらすっごい怒られそうだから、秘密だよ?」
そう言って見つめると、千寿郎は真剣な顔でこくりと頷いた。
「私が感じた事であって正しいかはもちろん分からないけれど、槇寿郎さんは……、とーっても弱い。」
桜は目を瞑って力強く言った。
千「……………えっ?」
「槇寿郎さんに比べたら千寿郎くんはとっても強いよ。槇寿郎さんは…、話してみたら自分の子供を嫌うような冷たい人じゃなかった。」
桜はまた優しく千寿郎の頭を撫でる。
「嫌ってるんじゃなくて、『接する事や現実と向き合う事が怖い、嫌われたっていい』、もしくは『自分が息子に嫌われているはずだ。』…そう思うほどに、自分が自分を嫌いで、自信がなくて、自暴自棄になってる。」
千寿郎の目が少し大きくなった。
「私はこのお家に何があったのか知らないけれど、そこまでなる繊細な槇寿郎さんが今まで立ててたのは…誰かが支えてくれていたから、じゃないのかな……。」
そう言いながら、桜は以前千寿郎が話してくれた病死したお母さんの事を考えていた。
「支えさえあれば、誰かの手を借りてさえくれれば、…槇寿郎さんはもっと素直に自分を見る事ができる。周りの人の事も見る事ができる。…と私は思うよ。」