第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
しばらく撫でてから桜はゆっくり体を離す。
やはり千寿郎は ぽーっとした顔をしていた。
(やっぱり可愛い…。愛おしいな…。)
「千寿郎くん?」
千「はい……。」
(これ…お外でやったら千寿郎くん隙だらけで危ない…可愛いし…。)
両頬をぺちぺちと軽く叩くと千寿郎は目を瞬かせた。
それを見て微笑むと、千寿郎は少し顔を赤くした。
千「桜さんの、その…今のは何なんでしょう…。」
「…うーん…千寿郎くんにしか抱きついた事ないからなあ…。杏寿郎さんが湯たんぽにした時は、心地よいとは言ってたけどどうなんだろう…。担がれたときは何ともなさそうだったなあ。」
千「どうしてだろう…ユキさんとは関係ないんですよね…?」
「うん…ユキは治す力だけな筈…だけど…、」
(…でも、ユキが胸に宿る直前に私もそんな心地を味わった事がある…。)
(それから、私が千寿郎くんを撫でるときはいつも………、)
「………。」
桜は無言になると じとっとした目をして千寿郎を手招きする。
千寿郎は戸惑いながらもおそるおそる近付いた。
その不機嫌そうな顔のまま桜が千寿郎を抱きしめる。
千「……………あの…?」
その声を聞いてパッと顔を明るくさせると桜は勢い良く体を離した。
「今ね!千寿郎くんじゃなくて虫の事考えてたの!今の千寿郎くんの声…もしかしてぽーってならなかったんじゃ…?」
千「あ、はい…!」
「わ、ほんと?いつも抱きしめる時、とっても愛情を込めてたから変えてみたら何か変化あるのかなって思ったの!試してみてよかった…!まだよくは分からないけど頑張れば制御できるみたいだね。」
そう言ってから桜は少し悪戯っぽく笑った。
「じゃあじゃあ、今度は千寿郎くんが抱きしめてくれないかな?心穏やかにしてみる。」