第79章 サイコロステーキ先輩
澄「やっぱり生徒が噂を大きくしたのか。じゃあもうフリーみたいなもんだよな。今夜2人で飲みに行こうぜ。」
澄滴の距離感がおかしくなってから杏寿郎もその変化にすぐ気が付いた。
しかし相手は同期で同じ科目担当である。
杏(横の繋がりにとやかく口を挟みたくはないが、あれは近過ぎるのではないか。一度牽制を……いや、桜から相談されるのを待った方が……、)
杏寿郎は桜が頼ってくれる事を信じ、暫くは同僚との邪魔をしないように努めた。
澄「なあ、彼氏ってそもそも本当なんですか?全然話さないじゃんか。」
「本当です。仕事中ですよ、こういった話題はやめてください。」
澄「今度こそ飲みに行こうぜ。同期で同じ科目担当なんだから話す事も相談する事もいっぱいあるだろ。」
「他の先生に聞いて間に合ってます。」
澄「早く素直になれよ。」
「なってます。」
自分にしては冷たくするように頑張れていたと自負していた。
しかし、澄滴は病的なほどポジティブで何を返しても『照れ隠しをしている』、『俺の事を好きなはずだ』という気持ちを変えなかった。
4月から1ヶ月経ち、ゴールデンウィークも明け、教育実習が始まると、今まで澄滴を止めてくれていた席の近い年配物理教師が実習生に掛かりきりになってしまう。
教育実習中の2週間は桜にとってまあまあな地獄だった。
(社会に出たら人間関係で悩むって聞いたことあるけど本当なんだな…。でも乗り越えないと!)
桜は自身に与えられた壁なのだと捉えると1人で頑張ろうと決めてしまう。
その間にも澄滴の勘違いは深まっていった。