第15章 兄弟の想いが詰まった晩酌
桜は膝立ちして千寿郎の近くへ寄ると目の前に座り、片手を畳について千寿郎の頭をそっと撫でる。
そして、真っ直ぐ千寿郎の目を見ながら口を開いた。
「槇寿郎さんは…可愛らしい人だった。」
千寿郎が首を傾げる。
それを見て少し微笑むと、また頭を撫でながら続ける。
「私、初めに挨拶してあの部屋見たときね、無理やりお酒を飲み込んで、何かを見ないようにしてるのかなって思ったの。」
「次に会ったとき…私が襖の下敷きにしたときは、意外と面食らいやすいんだなって思った。」
桜は言いながら醜態を思い出して少し苦笑いした。
「それで……、思い切って踏み込んでぶつかれば、槇寿郎さんは手を借りてくれるんじゃないかなって感じた。」
千「父上が…手を借りる……。」
千寿郎は父がいつも向ける突き放すような言葉を思い出し、不可解そうに眉を寄せた。