第78章 江ノ島観光
「わ、わわっ!ありがとうございます!」
桜はそう言うと後ろの客の迷惑にならないように素早く撮って下ろしてもらった。
するとそれを見ていた何人かの子供が父親に同じ事をしてくれとせがむ。
「ふふ、お父さん達も頑張りどころですね。」
杏「少し悪い事をしてしまっただろうか。応えてあげられていない父親もいる。」
見ればなかなかに育った息子がせがんでいた。
それを見ると桜も少々父親に同情して困ったように笑った。
「………………………………………………。」
カワウソの水槽から離れると桜の視線が分かり易くある一点で止まる。
杏寿郎はそれにすぐ気が付くと大股で "それ" に寄り、パッと手に取ってレジへ向かった。
「えっ、あの!!」
杏「欲しいのだろう!愛らしく抱えていてくれ!!」
そう言ってレジに出したのはカワウソのぬいぐるみだ。
部活帰りに連れて来られた桜は大きなカバンなど持っていない。
結局杏寿郎の言った通り真っ赤な顔で何故か袋に入れられず直接渡されたカワウソのぬいぐるみを片手に抱いたまま移動することになった。
「あ、ありがとうございます…。一目惚れしたので嬉しいです。」
恥を覚えながらもすぐに気持ちを察してくれた杏寿郎への感謝が勝り、桜はそう素直に礼を言う。
それを聞くと 杏寿郎は『Win-Winだな!!』と笑いながらぬいぐるみを抱える桜を微笑ましそうに見つめ、頭を撫でた。